心に体に地球に良い生活

1995年から『心に、体に、地球に良い生活』をテーマに、家づくりをしてきました。そのためには奥三河の木と自然素材で作る必要がありました。

私は自信の持てる家しか作りたくありませんので設計、現場管理は自分で行います。奥三河の無垢の木と自然素材、そのほかの材料も吟味して、ていねいで腕の良い、いつもの職人さん達と建てるのが私の家づくりスタイルです。

心配性なので、計画通り工事が進められているか、見えなくなる所、細かな所はどうかと気になって仕方ありません。ほぼ毎日、現場に行き確認をします。そしてお客様の家の点検、修理も私が出向きます。

無垢の木と自然素材で作る家は時間がたつほど、床板や壁板があめ色に変わり光沢がでて風合が増し、綺麗になるので愛着がわきます。古ぼけて汚くなると建て直したくなりますが、私の作る家は住まうほどに美しくなるので寿命は100年以上だと思っています。自分が死んだ後も大事に住み続けてもらえるのを想像すると、うれしくてワクワクします。

『心に、体に、地球に良い生活』をテーマに家作りを始めたのは、1990年代に社会問題化した、家が原因で体調が悪くなる「シックハウス」がきっかけです。国内には対策情報がほとんど無くて、シックハウスという表現すら未だありませんでした。

ちょうど息子が生まれた頃で、他人事とは思えず「家族の幸せのための家なのに、自分が作った家がお客様やそのお子さんを病気にするなんてイヤだ。シックハウスなんてプロとして絶対に建てたくない! 反対に住むと元気が湧いて、環境も良くする家を作りたい。」と強く思ったのです。

ところが、そういう家を作るにはどうしたら良いのか情報がほとんど無く、試行錯誤する日々が続きました。図書館に通い、新聞を何紙も読むなどアンテナを張り巡らす中で、『エコロジー建築』というドイツで書かれた健康と環境保護についての本が建築士の高橋元先生の翻訳で出版されたことを知りました。

読んでみると『住む人の体も心も健康にして、環境にも優しいのが本当の意味でのエコな住宅である。』という思想に基づく具体的な情報が満載でした。

簡単に言えば『石油化学製品をなるべく使わず、地元の無垢の木や自然素材の特性を十分生かして、風や太陽の光を上手に取り込む設計の家』がベストだと書かれていました。
現在の自然素材住宅に近い考えですが、地域や大きく言えば地球環境まで配慮している点が異なります。

無垢の木や自然素材は建築時も廃棄するときも環境に負担をかけません。素材自体が湿度や温度をコントロールするので余り機械に頼らず生活でき、電気やガスなどのエネルギー消費を抑えます。

それに国産材、特に地元の木を使えば運搬距離が短いので石油エネルギーの使用が少なくて済み、海外からの輸入木材と比べCO2の排出を大幅に抑えられます。

本のおかげで家づくりの指針がはっきりして、とても感動しました。そして東三河の気候に合った家づくりを突き詰めようと思ったのです。高橋先生に教えを乞い、一緒にドイツへ出かけるなど一生懸命に研究した結果、奥三河の無垢の木と自然素材で作るハミングの家づくりスタイルが完成したのです。

無垢材の最大の特徴は調湿すること

無垢の木には、たった1本の柱で空気中の約1リットルの湿気を吸ったり吐いたりする高い調湿機能があり、室内の湿度を安定させます。土や紙などの自然素材も、温度と湿度をコントロールしてくれるので、冬の窓廻りの結露、夏場の壁や家具の表面の白カビ、押し入れのカビ臭さ、ダニの発生を抑えます。しかし、合板やビニールクロスなどの新建材と呼ばれる工業製品には調湿機能がほとんどありません。

また、鉄やコンクリートの様に触れられないほど熱くなったり、冷たくなったりすることもありません。温度が安定すると床下や屋根裏、壁の中での結露が発生しにくいので構造体が傷みにくく、部屋ごとの温度差が原因で起きる心筋梗塞や脳卒中の心配も少なくなります。

特に桧や杉は一部の輸入材と異なり、少々の湿気で腐ることは無く、シロアリにも強いので薬剤処理が不要、安心です。

実際に住むと分りますが、杉や桧の床は夏サラサラしてべとつかず、冬はほんのりと温かくて床暖房が入っているかと間違うほどです。梅雨時は窓を閉めて湿気が流れ込まない様にすれば家の中はサラッと快適です。除湿器はいりません。そして無垢材や自然素材は有害な化学物質を含ないので嫌な臭いがせず、木の香りに満たされた安らぐ空間が生まれ、体も心も元気にしてくれます。

木の素性と選択

では、無垢の木なら何でもよいのでしょうか?

木の家を作るのですから木の素性がとても重要です。私が国産、それも奥三河の木にこだわる理由は先に触れたように輸送に掛かるコストが低いからですが、二つ目の理由は杉や桧は湿気やシロアリに強く長持ちするからです。

私は設楽町の製材所を営む家に生まれたので子供の頃から木に囲まれて育ち、最初の就職先も大きな材木市場でしたから、奥三河の木だけでなく国内外の木材の知識があります。だから、家作りでは地元の木を使い分けるのが一番良いと思っています。

適材適所

言葉の通り、木の種類、特性によって木材は使い分ける必要があります。
北欧産の硬く強度はあるけれど、湿気とシロアリには極端に弱い木を平気で骨組みに使う家作りなどは正気の沙汰とは思えません。
いくら薬剤で防腐防蟻処理をしても、薬剤が染みるのは表面の数ミリだけです。シロアリは数ミリの薬剤部分など簡単に突破しますし、釘やビスの穴から水が染みたら腐ります。水の染み込みなど、現場ではいくらでも起こります。現場や木材の特性を知らずに、机上論で建てられている現在の家作りは危険です。高温多湿の日本では、薬剤に頼らず湿気に強くて腐りにくい地元の木を使うのが何よりです。

水源の森を守る

設楽町がある奥三河と豊橋、豊川の街は水を通して繋がっています。町の生活用水は奥三河から来ますが、川が枯れないのは水源の森が雨水を蓄えるからでダムは補助にすぎません。

奥三河の森は人間が杉や桧を植えた、言わば木の畑です。手入れをしないと、立派に育たず枯れてしまい、木が枯れれば雨で地肌が削られハゲ山になります 手入れされた森には草が生え、腐葉土を作ります。腐葉土のミネラルを含む水が川から三河湾に注ぎ海藻を育て、豊かな漁場を作ります。植えて育てて伐採してまた植えるサイクルが大切です。

賢くて正しい家作りがしたい

木は再生可能な優れた素材です。『子供を産み、家を建て、木を植える』と言う、若い人の人生の目標を示した伝統的な格言がドイツにあるそうです。

日本でも同じことが言えます。未来のことを考えた賢くて正しい家作りをしたいです。こんな考えを理解して頂けるお客様とジックリたくさん対話をして、お客様と二人三脚で美しい木の家を作り上げること、作った家のメンテナンスを続けること、それがハミングの仕事です。

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